星形の絞り(VOLNA9)、綺麗な円形絞り(TAIR-11)以外の特徴ある絞りのレンズを紹介する。ZENITAR-ME1。公式サイト(コチラ)の説明にすら「珍しい正方形の開口部が特徴」(объективы характерны необычной квадратной диафрагмой)と記すくらい、絞り羽根が特徴的だ。 絞り羽根は2枚。20枚もの羽根を持つTAIR-11の10分の1。直角のV字形の2つの羽根の互いの距離で開口部のサイズが変わる。ちょうど画家、あるいは我々カメラマンが親指と人差し指で四角をつくり構図を定めるべく腕を左右に動かして指間を調整する動きと似ている。F1.7からF / 16の間、クリック感はなくあらゆる中間F値が設定できる。まさに“指呼の間”と言えるほど随意である。 得られるボケは、当然四角となる。他では類を見ない(необычний)羽根構造が生み出すボケは、抽象画、あるいはデジタルなモザイクを施したような不思議な背景を生み出す。作品のマンネリ打破に一役買ってくれるレンズかもしれない。 プロトタイプには4枚羽根の設計もあったと公式サイトには記されている。 尚、このレンズはZENIT-18専用レンズとして設計され、本体との電子接点を有する。カメラ側で絞り値を読み取り、絞り優先モード等、露出の最適化を電子的に行うことができる。-MEの「E」の文字は電子(=電子制御)を意味する。 ZENIT-18に付けて販売され、その製造数も1980~87年の7年間で7,000台と少なく希少性は高い。ZENIT-18とセットで20,000ルーブル(約3万5千円)程度の本体完動作モデルをロシアの中古市場で目にすることはある。レンズ単体での販売はZENIT-18から外され流通しているものだ。物珍しさから海外にも流出し、ロシア国内でもレア玉の部類となっている。
レンズ名 | ZENITAR-ME1(1984年製) |
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製造会社 | KMZ(クラスノゴルスク機械工場) |
マウント | M42 |
焦点距離 | 50mm |
開放絞り | F1.7 |
光学系 | 5群6枚 |
最短撮影距離 | 0.45m |
