ロシア(ソ連)のレンズの歴史は第二次世界大戦後、東ドイツ(当時)のツァイス・イコン社の工場を接収したことに始る。その技術のみならず設備、工員までもをキエフ、クラスノゴルスクといった当時ソ連領内の軍事・宇宙用光学品製造工場に移し、カメラのContaxのコピー(Kiev)や、ツァイス・イエナのレンズSonnar等のコピーを造りはじめた。そのひとつが、このЮпитер-8である。 その描写については、コピーゆえかSonnarほど洗練されておらず、どこか牧歌的なやわらかさを残した写りと言われる。ドイツ人とロシア人の性格の差がそこに出ていると見るのは穿ち過ぎだろうか。 我々МФКのメンバーが懇意にしているモスクワの中古カメラ・レンズ商のF氏によると、ロシア製のレンズは戦勝直後の接収期が、最も精度が高く、オリジナルに近いクォリティであった。理由は、材料から全てを西側から接収したためである。そして、1991年のソ連崩壊期の前後が一番、その品質を落とした時代だそうだ。 ロシア・ソ連製のレンズはシリアルナンバーの最初の2つの数字が製造年の西暦下二桁を表している。購入の際には参考にされたい。 画像の右側、銀鏡胴のものはオールドカメラのKIEVを購入したときに付いてきたもの。マウントは旧Contax-Cと呼ばれるもので、当時ロシアの専門店にもアダプタが見つからず、日本に一時帰国した際にヨドバシカメラで、まず旧Contax⇒VMマウントのアダプタを付け、そこにさらにVM⇒E-mountのアダプタを付けて対応するという離れ業を教わり、ようやく使用できたという想い出がある。 2018年9月15日~24日開催の「レンズの奥のロシア展」の会場では、その時に初めてこのオールドレンズを装着したSONYα7Rで撮影したモスクワの蚤の市ベルニサーシュの中古レンズ屋の様子を写したものを展示する予定にしている。
レンズ名 | Юпитер-8/Jupiter-8 (黒91年製、銀55年製) |
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製造会社 | KMZ(クラスノゴルスク機械工場)ほか |
マウント | 黒 L39、銀 Contax-C |
焦点距離 | 50mm |
開放絞り | F2.0 |
光学系 | 3群6枚 |
最短撮影距離 | 1m |